8mmフィルム : Hi8 = Hi8 : DV

 Hi8が、一般家庭に普及し始めた頃、自称「映像通」は、「Hi8には味がない。やっぱり、8mm(ハチミリ)が良い。」と口を揃えるように言った。彼らが、実際に、8mmを使い続けたかは不明だが、自主制作映画をつくる多くの人たちは、8mmフィルムで映画を撮ってきた。一方で、コストパフォーマンスが良いHi8や画質が良いベータカムを使っていた人たちは、8mm派からバカにされていたところがあった。あんな、安っぽい映像で映画が作れるかと。

 映像作品をつくる人たちには、画質へのこだわりがある。そして、そのこだわりは、二つの相反する極へ向かうものである。

 その極というのは、HiFiとLoFiである。画質の良さをとことん追求したHiFi、単なる画質の良さだけではなく、味のある映像を求めたLoFi。ただきれいな映像というのは、時にはもの足りな時があるのだ。その「時には」というのが、感情表現を多用する映画などである。記録や報道という分野では、臨場感のある鮮明な映像が求められるが、映画では決してそうではないのである。

 僕自身、LoFiが醸し出す「味」というが好きだ。しかし、LoFiなものというのは、とにかくお金がかかる。8mmフィルムに関しては、いくら金があっても足りないような物である。まず、カメラ自体がすでに市販されていない。だから、中古を用意する必要がある。これ自体はお金がかからないのだが、問題はフィルムである。元々、フィルム自体が記録時間に対しての費用が高いメディアである。その上、今では、現像ができる場所は限られている。中には、アメリカに送らないと現像できない物まである。貧乏学生には、とても手が出ない物なのである。

 今、世の中は、新しいHiFiを迎えている。それは、DVである。小さいテープにデジタルで高画質で記録する何回もダビングしても、ほとんど劣化がない。夢のようなコンシューマ(消費者向け)ビデオメディアである。僕自身、高校時代、このDVをフルで活用していたし、現在も借り物ではあるが、時々利用している。加えて、購入するため必死にお金を貯めている。

 ふと思ったのだが、LoFi:HiFi=8mm FILM : Hi8という構図が代わろうとしているのではないか。

 19(ジューク)のビデオクリップの中で、全編Hi8が使われている物がある。そして、その映像は確かにLoFiなのである。えっ?何だって!Hi8が、LoFiになった?良いのか、悪いのか、そうなってしまったのだ。でも、DVは、家庭でも業務用レベルの画質を実現できる可能性を秘めたメディアである。それに対して、Hi8は貧弱である。そして、DVを使い慣れてくると、Hi8に味があるように思えてきた。

 新しい構図。それは、LoFi:HiFi=Hi8 : DVなのである。

 僕らにとっては、Hi8が8mmフィルム的な存在なのかもしれない。先輩たちが、その青春を8mmフィルムにおさめたように、僕らはHi8におさめてきたのだから。

 盆の終わり頃に、TBSで豊川悦司と加藤あいが主演した2時間ドラマで、過去(青春時代)を8mmフィルムで表現していた。30以上の人にとっての青春は、8mmフィルムなのかもしれない。僕が、今抱いている企画の中では、過去はHi8である。そう、僕らは、あのノイズが乗った嘘臭い色合い、輪郭の甘さが青春なのかもしれない。

 でも、映画はVHSよりDVDだよな。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA