下北で21時近くに駅の入り口を差し掛かったところで、トロンボーンの音色が聴こえてきた。あっ、あの人たちだなと買い物に向かう途中で見掛けた楽器を出す人たちの姿を思い出す。
観客の中に、誕生日の子がいるんだと言いながら、ギターをぶら下げたボーカルがリズムをとり、また曲を奏で始める。すると、ちょうど、彼等が背にする銀行のシャッターが降りてきた。ガタガタと彼等の音を掻き乱す。でも、そんなのには動じない。「トロンボーン、シャッターに負けるな」とボーカルが応援する余裕がある。
ボーカルがサッチモのものまねで唄い上げた後、一人の警官がチャリで彼らの前に乗りつける。彼は、「ちょうど時間になりました」とおどけて見せる。
みなさん、ご歓談をと、警官が差し出したかみに何やら連絡先を書く。観客はじっとその光景を見つめる。君らはこの場に於いてはスターだと。
画面のなかでガタガタ言っているのとは違う。ストリートを味方に付けろ!